細雪 ~ 原作を読んでから映画を観たら

NHK BSで細雪市川崑監督)を観た。たまたま1ヶ月前に原作(谷崎潤一郎著)を読んだばかりだ。この映画は近所のTSUTAYAとGEOになかったので、諦めていた時にこのテレビ放送。ちょっとした偶然でもツイてる感じがして嬉しい。

映画で観たいと思ったのは、小説で描写される着物の映像が目に浮かばなかったから。わずか80年前の話なのに、生活習慣がここまで変わってしまうと、もはや馴染みのない外国の事のようだ。そうでなくても関西の文化はたいていの北海道の人間にとって未知の世界。着物以外の事についても映像の助けがほしい。

お花見や三女雪子(吉永小百合)のお見合いのたびに華やかに装う女性達。雪子の婚礼用の着物が特に意味もなく(?)広げてあったり、映画の中でも着物が準主役であるように感じた。鶴子(岸恵子)と幸子(佐久間良子)が普段着として着ている着物が粋だ。高価なんだろうなぁ。それにしても岸恵子佐久間良子の綺麗なこと。

着物や調度品など視覚的な点では楽しめたし、それがこの映画を観た理由なのだから、満足といえば満足。しかし原作を読んだ直後ということもあり、どうしても原作との違いが目についてしまう。映画の登場人物のキャラクターが若干違っているし、雪子と義兄の関係もうっとうしい。人物の性格がきつく、言い争いの場面が長々と続いて辟易することも。小説を読んだときに感じた、「なんと悠長な人達だろう」という雰囲気がないのだ。ストーリーをある程度変えるのは致し方ない。しかし、谷崎潤一郎が描きたかったのは関西の裕福な家庭の余裕や悠長さなのではないか。障子の向こうが赤く染まって怪し気な雰囲気になる演出も、谷崎の他の作品ならぴったりきそうだが、細雪ではどうかと思う。まあ、小説を映画で再現しようとしたわけではないと言われればそれまでだが。

もうひとつ違和感があるのが、吉永小百合の雪子だ。これはもう、キャストを見ただけで「違うだろ」と。雪子はよく知らない人には”陰気”という印象を与えかねない人物だ。実際には陰気ではないのだが、親しい姉妹にとっても何を考えているのかわからない、”捉えどころのない”タイプだ。どんなに演技が上手くても、持って生まれた雰囲気まで変えるのは簡単ではない。私が芸能人でイメージしたのは山口百恵だ(1983年の映画だからすでに引退しているが)。この小説(映画)の軸になる人物なのだから、雪子役のキャスティングは難しいと思うがもっと考えてほしかった。

原作を読んでから映画を観て高評価をつける難しさ。着物のために観たのだから割り切るしかないか。。。