地獄で仏に出会った奇跡 ~ 番外編 (さらなる災難)

この旅ではもうひとつの災難に見舞われた。今度は仏にも天使にも会わなかったので、一応番外編としておく。

 

待ちに待ったパスポートが発行された。このパスポートはチェコで発行されているのに発行年月日は日本で作った元のパスポートと同じになっていた。そのことについて、受け取る際に大使館で「そういうものですから」という説明(?)があった。素人から見れば奇妙だけど、入国管理では常識なんだろう。。。と思うよね?ところがそうではなかったようで、これが原因で酷い目にあったのだった。

 

ドイツで友達の家に一泊させてもらって、帰りの列車内でのことだ。チェコとの国境が近くなりパスポートコントロールが回って来た。すると私のパスポートを見た係員が「このパスポートは何だ?」と言う。盗難に遭ってチェコで再発行したものだと説明したが「こんなパスポートでは駄目だ。次の駅で降りろ!」この態度がもろに共産主義国(もう違うんだけど)って感じの横暴さで怖かった。

 

「いやだ!」といくらごねても当然無駄なわけで、警官みたいな人達が4、5人現れて両腕を掴まれ、国境近くの小さい田舎の駅で無理やり降ろされてしまった。翌日早朝の飛行機で帰ることになっていて、こんなところで足止め食らってる場合じゃないのに~!駅の中だったか近くの警察署だったか、もう覚えていないが、とにかく取り調べを受けた。やっぱりネックになっているのは発行年月日。

 

チェコで再発行されたのに、この発行年月日はおかしいだろう」

「大使館で、そういうものだと言われました」

「なぜだ?」

「知りません。そう言われただけなので。」

「それはおかしいだろう?」

「でもそういうものだそうです。」

「なぜだ?」

このループ。。。もうブチギレた! 

「それならプラハ日本大使館に電話で問い合わせてください!」

しばらくすると突然釈放(?)された。ふざけんなよ、まったく!盗難のときと違い、私の側に落ち度はなかったから、なおさら頭に来た。改めて電車に乗ったが、もう各駅停車しか残っておらず、プラハに着いたときには予定より数時間遅れていた。

 

大きい荷物はアネッテの所に置かせてもらっていて、荷物を受け取りに寄ってから空港に前乗りすることにしていた。予定の時間よりかなり遅れてしまったので、大急ぎでアネッテのアパートへ。でも何度玄関のベルを鳴らしても応答がない。ぐったりして階段の踊り場に座り込んだ。1時間くらい待っただろうか。突然、ドアが勢いよく開いた。「ごめん!ヘッドフォンしたまま眠ってた!」そんなことだろうと思ったよ。。。はぁ~、よかったあ。。。最後の最後まで気が抜けない旅なのだった。

 

盗難の被害に遭ったのも、国境でトラブったのもチェコの国民のせいではないのはわかっている。でも飛行機が離陸したときは「二度と来るか!こんな国!」と思ったし、その後もずっとそう思っていた。それがテレビの街歩き番組などで何度も目にするうち、やっと数年前から「あ~、もう一度行ってみたいな」と気持ちが変化してきた。私にとっては、嫌な気持ちを忘れるのに十年以上かかる出来事だったのだ。

 

外国、特に言葉が通じない国でトラブルに見舞われたときの心細さと言ったら。。。そんなときに、見ず知らずの人達や出会って間もない人が手を差し伸べてくれ、人の善意が身に染みた。「YOUは何しに日本へ?」で密着した、お金を無くしたメキシコ人には昔の自分を重ねずにいられなかった。自宅に泊めてあげた日本人青年に幸あれ。