記憶の不思議

私はなんでもすぐ忘れてしまうほうで、特に小説や映画の筋はよっぽど印象に残るもの以外、右から左へ流れるように記憶から消え去ってしまう。読んだ本のタイトルと著者名をノートに記録しているが、3か月前に読んだ本の内容を覚えていないのはいつものことだ。この程度の記憶力と諦めてはいるものの、ちょっと虚しい。だって1か月に6,7冊しか読まないんだから。

 

先月、テレビで「刑事フォイル」の”隠れ家”という回を観ていたら、見覚えのある女優が出ていた。「何で見たんだっけ?」ちょっと考えた。そうだ、「ダウントン・アビー」のクリスマスSPで、伯爵家がスコットランドを訪ねたエピソードに出ていた伯爵の従妹役の人だと思い出し、すっきりした。「ダウントン・アビー」は英語のリスニング練習を兼ねて何度も観ているので、さすがの私も主要人物の顔くらいは覚えていたのだ。

それから何日かして、図書館でルース・レンデルの小説が目に留まった。「ルース・レンデルといえば。。。」と、昔観たテレビドラマのことを何とはなしに思い返していた。1996年から97年にかけてイギリスに滞在していた時に観た、ルース・レンデル原作の"May and June"という単発ドラマだ。MayとJuneという姉妹が主人公で、一人は美人でもう一人はそうではない、ということ以外何も覚えていない。ドラマの名前を覚えているだけでも、私としては奇跡的だ。そのとき突然、「あの女優が”美人じゃない方”の役で出てた💡」と思った。

調べてみると、本当にそうだった。もう、びっくりだ。19年前のそんな些細な記憶、私の頭の中のどこに残っていたんだろう。それに、「ダウントン・アビー」を観たときには全然思い出さなかったのに、なぜ今思い出すのか。記憶って不思議だなぁ。

ちなみにその女優の名前はフィービー・ニコルズ( Phoebe Nicholls )。ウィキペディアで調べたら、イヴリン・ウォーの小説”ブライヅヘッドふたたび”を1981年にテレビドラマ化した "Brideshead Revisited"(ジェレミー・アイアンズ主演)での役で(イギリスでは?)よく知られているらしい。そういえばこのDVD、数年前に買ったまま放置してたよ。。。

 

時効が迫った事件の目撃情報を求めているというニュースを見ることがある。そのたびに「10年も経って新情報が出てくるわけないのに。。。」と思っていた。でも何年も経ってから、何かのきっかけで思い出す記憶もあるんだ、と気付いた。その記憶がいつも信頼できるとは限らないが。

赤ちゃんの頃(果ては前世まで)の記憶まで遡ることができる催眠療法がある。普段は引き出せないだけで、記憶はすべて脳の中に入っているのだという。ちょっと眉唾だと思っていたが、ひょっとしたら真実なのかもしれないと感じた出来事だった。