十数年振りに観たお気に入りの映画 

ふたりのベロニカ / クシシュトフ・キュシロフスキ監督 (1991年)   

 大好きな映画だけど、手元にあるのはVHS。DVDを買うべきか迷っていたところ、YouTubeで300円で3日間レンタルできるようになっていたので、試しに観てみた。最後に観たのは、15年以上前だと思う。

 

一種のファンタジー 

ポーランドとフランスに、名前も見た目も同じふたりの女性がいる。ふたりとも、自分がもう一人いるような感覚を持っている。ポーランドのベロニカは急死。訳のわからない喪失感で涙を流すフランスのベロニカに話が移る。作家で人形使いの男性に惹かれたベロニカは、謎の電話と郵便物を手掛かりに、作家の居場所を探り出す。

はっきり言って、ストーリーは重要ではないだろう。とにかく映像を楽しむ映画だと思っている。音楽もいい。冬のクラフフとパリを舞台に、全体を通してセピア色のフィルターがかかったような色調の中、カメラはベロニカを追う。窓から見える道路の水たまり、アパートの廃墟のような玄関、雑然とした部屋の中。そんなものまでもが美しく見える。スーパーボールを透して見る車窓の景色と、人形劇の場面は特に印象的だ。

 

赤色に溢れた映画

紅殻色やオレンジがかった赤など、ベロニカの服はもちろん、壁、置物、紅茶、街中のポスター、エキストラの帽子やコート、果ては歯ブラシに至るまで、赤い物は数え上げたらきりがない。赤以外は、たまの緑しか識別できない。

 

以前と違う印象だったこと

映画の出来とは無関係だが、今見ると意外に抵抗があったのが、当時のファッションだ。あんなに肩パッドが入ったごついシルエットだったんだ。。。ベロニカは24才の設定なのに、服だけ見ると40代みたい。どうしようもないことなんだけど、ファンタジー映画(個人的な意見です)に時代が反映されるのはやっぱり厳しい。

それでも美しい映画であることに変わりはない。DVDを今買わなくても、また観たくなったらいつでも(画面が小さいのは残念だけど)YouTubeで観られるのは嬉しい。便利な時代になったものだ。

独特の音楽も映像とセットで記憶に残る。