イスラエルの小説  「エルサレムの秋」 / アブラハム・B・イェホシュア

ほぼ片思いだった今も忘れられない女性が突然、夫を通して連絡してくる。3日間だけ3歳の息子を預かってほしいと。父親が連れて来た子供は美貌の母親に瓜二つだった。語り手は体調のすぐれない子供をあちこち連れまわし、熱心に遊んだりしたかと思えば、冷たく突き放したりする。

 

子供の体調が悪化すると、「子供は死んだ」と彼女に告げる想像をする語り手は少しうっとりしているように思える。子供に彼女を重ねて復讐をしているのか。いつも上の空で、つれなかった彼女の心を揺り動かし得る手段を手にした戸惑いなのか。正直、作者の意図が私にはわからなかった。心の揺れを繊細に描いた小説は、がさつな私向きではない。

 

普段は新聞の書評やネットのレビューを参考に面白そうだと思う本を選ぶので、小説を含め自分の好みの範疇から大きく逸れた本を読むことはまずない。国名を五十音順にたどる中で適当に本を選ぶことにしたのは、偶然に任せることで、いつもなら選ばないようなものに出会いたかったからでもある。だから、なんの感想も思いつかない小説に当たるのも致し方ない。今後、こういうパターンが多くなるかも。