リッチーのそっくりさんの話

今日はリッチー・ブラックモアの誕生日ということで、リッチーにまつわる話をと思うけど、何も思いつかない。なので、無理やり昔の話を引っ張り出してくることにした。といっても、直接リッチーに関係があるわけではないのだけれど。

 

リッチーの話題だと、どうしても何十年も前の話になってしまう。これも40年近く前、私が高校2年か3年の時のことだ。その日、私は病院に行ってから登校する予定で、病院の時間に合わせていつもよりかなり遅く家を出た。バス停で列に並んでバスの来る方向を見ていると、全身黒のひょろっと背の高い男の人が歩いて来るのが見えた。「えっ!?」

 

もう、ぎょっとしたわ。その人はパープル2、3期頃のリッチーの恰好をしていた。今風に言えばコスプレイヤーというか。黒いベルボトムに(カリジャムでも着てたベルベットのと似た)黒いジャケット、それに何よりリッチーと同じ髪形(あの髪形を真似するのはなかなか難しいと思いますよ)。一応断っておくと、当時(1979年か80年)はすでにそういうファッションの時代ではありませんから(笑)。その人(以下、偽リッチー)もバスの列に並んだが、いくらなんでも振り返って見るわけにもいかず、バスに乗ってからじっくり観察することにした。

 

私は後ろの方の席に着き、偽リッチーは(真ん中の)ドアの付近に立った。観察しやすい位置でラッキー!よく見ると、服装だけでなく顔も似ている。目が釘付けになり、凝視せずにいられない。するとさすがに視線を感じたらしく、向こうもこっちを見る。とっさに窓の外に視線を移し、しばらくしてからまたそ~っと観察。するとまた気付かれ、慌てて目を反らす、の繰り返し。

 

偽も終点の地下鉄の駅で降りたが、私の前に乗客がたくさんいて見失ってしまった。まあ、仮に見失わなかったとしても後をつけるような勇気はなかったが。学校に着いてから友達に「リッチーのそっくりさんを見た!」と興奮して報告したのは言うまでもない。それからは毎朝バス停で偽が来るのを期待していた。でも時間が違うせいか二度と見かけることはなかった。

 

しばらくして、偽の存在も忘れかけていた頃。学校帰りに札幌パルコ内の「王様のアイディア(アイデアだったか?)」という雑貨のお店に立ち寄ったとき、なんとなくレジの奥に目が行った。すると、ストックが置いてある薄暗いスペース内の棚にかけてある小さい鏡に偽リッチーの顔が映っているではないか!思いがけず偽の居場所を発見して狼狽した私は、本当に偽なのか確認することもなく、なぜかダッシュで店を出た。

 

次の日の学校帰り、家が近所で登下校が一緒のことが多かったミーハー友達(ヴァン・ヘイレンのデイヴ・リー・ロスとジャパンのデヴィッド・シルヴィアンのファンだった)に付いて来てもらい、再度パルコへ。店の外の通路から、間違いなく偽であることを確かめた。「ねっ!似てるでしょ!?」という私に、友達はニヤニヤし「きっとさぁ、誰かに『リッチー・ブラックモアに似てるね』って言われたんだよ。それでああいう恰好するようになったんじゃない?」うん、そうかもね~。

 

それからは、時々学校帰りに「王様のアイディア」に寄り、商品を見る振りをしてこっそり偽をチラ見する日々。が、ある日、いつものように(?)お店に行くと、髪をスッキリ短くした偽の姿が!がっかりする私。でも、さすがにあの時代遅れの髪形を維持してまでリッチーのスタイルにこだわる理由もないだろうしね。短髪の偽の顔は、リッチーよりむしろ郷ひろみに似ていると思った。私はそれ以降二度と偽を見に行くことはなくなり、いつの間にかパルコの「王様のアイディア」もなくなった。

 

それだけの話なんだけど、この一件で今考えても不思議なのが、偽を再発見したときの状況だ。上にも書いたように、レジ奥の商品庫(?)に斜めの角度で棚に取り付けられた小さな鏡。たぶん、奥にいてもレジに来た客に気付けるように、ということだったのだろう。そこに偽の顔が映ったとき、偽は棚の陰にいて私から見える位置にはいなかったんだよね。探していた人をそんな風に見つけることってある?そっちの方が、リッチーに似た人がいたってことより不思議で印象に残っている出来事なのだ。