インタビューでリスニング練習 ~ 「ロックスターの英語」

20年以上前のことだけど「Over Melbourne」というレインボーのCDに収録されているリッチー・ブラックモアのインタビューをしつこく聞いていた時期がある。1976年11月にメルボルンで録音された48分のインタビューだ。当時はリッチーが話している声など他に聞く機会はなかったし、彼のアクセントが好きだったこともあり、100回は聞いたと思う。それだけ繰り返していると、初めは聞き取れなくても徐々に判明していく部分がけっこうあるのが本当に嬉しかった。やっぱり好きなもので練習するに限ると実感したものだ(英語の練習のために聞いていたわけじゃないんだけど)。 


同じ物を繰り返し聞くのがいいとわかっていても、普通の教材だと飽きてしまう。今はYouTube などでいくらでも生の英語を聞く機会はあるが、英語の字幕などついていないので正解がわからずストレスがたまる。それで、英語字幕付きの映画やドラマでリスニング練習をしている人は多いと思う。でも、よっぽど好きな作品でない限り何度も観ていられるものではないし、台詞がない部分も多い。同じ部分を繰り返したいときも面倒だ。

 

普段は英語教材を買うことなどないのだけど、イングリッシュ・ジャーナルの「ロックスターの英語」というインタビュー教材がちょっと気になり、どんなものかと kindle版を買ってみた。もっと新しい「ハリウッドスターの英語4 英国俳優編」というのもあって迷ったが、ロック編も9組中7組がイギリス人だし、取りあえず今回はこっちに。リスニングの練習のためなら特に苦手なアメリカ英語を選ぶべきなんだろうけど、耳が拒絶してどうしても聞く気になれないのだ(笑)。でも、これに入っているのはアメリカ人のも全部聞いた。収録されているのは ポール・マッカートニージミー・ペイジローリング・ストーンズ(主にミック・ジャガー)、ノエル・ギャラガ―、スティング、カルロス・サンタナブライアン・メイ、ブライアン・ジョンソンレニー・クラヴィッツ。 

2分くらいのセクションに分かれていて使いやすい。スクリプトは言いよどみなども落とさず細かく書かれている。各インタビューは7分ほどで、飽きずに聞けるちょうど良い長さだと思う。 

私にとっての聞き取りやすさの順は

メイ >>> ペイジ = マッカートニー = スティング > クラヴィッツ > サンタナ > ギャラガ― >>> ジャガー >>>>>・・・>>> ジョンソン

クラヴィッツサンタナも早口ではないので、アメリカ英語にしてはわかりやすかった。解説によると、サンタナはメキシコの生まれだそうだから、ネイティブではないせいかも。クラヴィッツは複雑なバックグラウンドを反映してか、相手によって話し方が異なるそうだ。きっと、このインタビューではクリアな話し方をしているのだろう。

 

他には

ブライアン・メイ  

とにかく綺麗な英語。耳に優しい。ずっと聞いていたい(笑)。解説では若干イングランド南部の訛りがあるとのことだが、私にはRP(Received Pronunciation)のように感じられる。

 

ジミー・ペイジ

階級・地方のアクセントというより個人的な話し方の癖が強いように思うが、ちょっとねっとりしている以外は聞きやすい。話の内容が完全に音楽関係なので、語彙が難しめ。

 

ポール・マッカートニー

ある程度の年齢の人なら、彼が話しているのをテレビなどで聞いたことがあるだろう。聞き取り難いほどの訛りはないし、ゆっくり話すのでわかりやすい。

 

スティング

解説ではブライアン・メイと同様の知的な標準英語とのことだが、私にはかなり違って聞こえた。なんというか、イギリス英語っぽく聞こえないのだ。イギリス英語特有のパキパキした響きがない。でも聞き取りやすいのは確か。

 

ノエル・ギャラガ

「オアシスのしゃべり方がイギリスの若者の英語を変えた」と言う言語学者もいるそうだ。へ~。マンチェスター・アクセントを維持しているのは有名なので覚悟して聞いたが、早口じゃないので恐れていたほど難しくはなかった。特に後半でサッカーなど雑談的な内容になると急にテンションが上がって滑舌もよくなる。

 

ミック・ジャガー

子音を飲み込み、つっかかるような話し方で聞き取りにくい。解説では、ペイジと同じイングランド南部のアクセントがより濃縮された形とあるが、私にはペイジとはずいぶん違うように聞こえた。でも若い頃の彼の英語はこんな風ではない。60年代のインタビューを聞いてみると、明らかに今とは違う。

 Mick Jagger interview | 1965

中産・上流階級の人が労働者階級寄りのアクセントに変えるのは今では珍しくないらしいが、ミック・ジャガーはその先駆けとみなされているようだ。

 

ライアン・ジョンソン

いや~~、無理です。ニューカッスルのアクセントは強烈! "b"と"p"の音がものすごく強くて、ブチブチ切れて聞こえる。電波が悪いときの電話みたい(笑)。このインタビューで「ツアーから帰ると手持ち無沙汰で、もう一行程ならやってもいいなという感じ」と話をしていたが、先月、聴力の問題でドクターストップがかかった。最近になって、ツアー中の後任はアクセル・ローズに決まったというニュースも。ブライアン・ジョンソンは引退という噂もある。あんなにツアーを楽しんでたのに、気の毒なことだ。

 

どのインタビューも数回聞いた段階で聞き取れなくても、スクリプトを読めば、もうそのようにしか聞こえなくなる(ブライアン・ジョンソン以外)。この中に好きなミュージシャンがいればリピートも苦にならずにリスニングの練習ができるのではないだろうか。

 

ちなみに、「Over Melbourne」の頃のリッチー・ブラックモアの英語は、この中でいうとブライアン・メイの次くらいにわかりやすいと思う。単に私が聞き慣れているせいだろうか。ただ、長年のアメリカ暮らしで、今のリッチーの話し方はずいぶん変わってしまった。まあ、しょうがないよね。

 

※2017年12月1日追記

ライアン・ジョンソンは2017年8月のレディング・フェスティバルでヘッドライナーをつとめたミューズのステージにゲスト参加し、"Back in Black"を演奏。引退どころか。。。なのだ。