「ピカピカのぎろちょん」 / 佐野美津男

子供の頃、ダントツでお気に入りの本だった「ピカピカのぎろちょん」。意味不明のタイトルにちょっと不気味な表紙絵。他の児童書とは毛色の違う物語はインパクトが強かった。

ある日突然、歩道橋に穴が開き、新聞は配達されず、テレビも映らなくなる。町のいたるところにバリケードが築かれ、学校も休みになる。”ピロピロ”のせいらしい。子供達は主人公が垣間見たギロチンらしきもののスケッチを元に”ぎろちょん”というおもちゃを作り、野菜を(へたの部分で)処刑して遊ぶ。

日常から半次元ずれたような世界の不安と謎。異常事態に少し興奮気味の子供達。すっきりしない結末。それでいて、からっとして硬質な印象の物語だ。大人になってから読んでも楽しめるが、さすがにもう謎は多くない。子供と大人の視点の違い、ひいては子供がワクワクする本を大人が選ぶことの難しさを感じさせられる。

小学校3,4年の頃、この本を友達に勧めまくっていた記憶があるが、友達の読後の反応は鈍かったような気がする。今思えばそれも当然で、万人受けする本ではない。しかしこの本は「復刊ドット・コム」へ寄せられた読者のリクエスト投票により2005年に復刊された。ファンだった人達がたくさんいることがわかり嬉しく思う。